最近の読書(2022年8月)

●クーリエ・ジャポン編「不安に克つ思考 賢人たちの処方箋」講談社現代新書、2021年

 クーリエ・ジャポンは、世界中のメディアから厳選した記事を日本語に翻訳して掲載する月額会員制のウェブメディアです。

 本書は、クーリエ・ジャポンに掲載された記事の中から、世界の賢人たち19人のインタビューを中心に取りまとめたものであり、コロナ禍後の世界を考えていく上での羅針盤となるものとして編集されたものです。

 2010年代になり、軍事用語だったVUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)がビジネスの世界だけでなく、一般社会でも使われるようになりました。これに対応して、人々に求められる知識やスキル、そして態度や行動なども変化するものと考えられます。

 コロナ禍は、人類初めての体験であり、世界の国々もこれが正解だという答えを持っていません。今は航空機を利用すれば2日もあれば世界中どこにでも行けます。すなわち、感染症に罹患して発病する前に人々は他の国に入り込めてしまうのです。

 私たちはコロナ禍から何を学び、今後の社会生活のあり方について、どのような希望や課題を学んだのか、を整理しておくことは重要です。また、日本国内の有識者だけでなく、同時代に生きている世界各国の有識者がどのように考えたのか、は日本国内のみの議論にとどまらず、グロバリゼーションをどこまで進めていくべきなのかを問いかけています。

 コロナ禍の終焉が近づいている今まさにこの時に、コロナ禍後の新たな時代のあり方を問い直すきっかけとなるような複数の論文や対談が掲載されている書籍です。1つのテーマに対し、複数の意見を聞き、自分なりの考え方を作り上げていく素材としてみましょう。

【目次】

序章 時代精神の転換

第1章 コロナ禍と人間

第2章 分断と新秩序

第3章 資本主義の諸問題

第4章 コロナ禍の中で働くということ

第5章 文化という希望

●ヤニス・バルファキス、江口泰子訳「クソったれ資本主義が倒れたあとの、もう一つの世界」講談社、2021年

 ヤニス・バルファキス氏は、経済学部教授として、英国、オーストラリア、ギリシャ、米国で教鞭をとっていましたが、2015年ギリシャ経済危機のさなかにチプラス政権の財務大臣に就任されました。その際、財政緊縮策を迫るEUに対して大幅な債務減免を主張したといわれています。なお、著者には、「父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい掲載の話」ダイヤモンド社、2017年、という著書があります。

 本書の紹介文には、「異色のSF経済学書」(P350)、「パンデミック後の資本主義社会を、鋭く問いかける野心作」(P350)といった評価がなされているようです。

 本書の中には、現在の資本主義がもつ問題点とそれを解決する方策について、様々な可能性を提示されています。

 第3章では、もう1つの世界での「コーポ・サンディカリズム」(P71)では、「上司なし、給料差なし、問題もなし」(P72)、「1人1株1票」(P79)、「積立-民主的な不平等」(P88)、「相続-全員に対する信託金」(P89)、「配当-社会資本のリターンを受け取る、市民共通の権利」(P91)、「富は言語のようなもの」(P95)、「単純なローン」(P97)、「信用力ではなく社会力」(P101)、「TATIANAは生きている!」(P107)といった新たな資本主義社会の要素が記載されています。

 いっぽう、第4章「資本主義が死に絶えたそのあとの世界」(P111以降)では、「銀行の終焉」(P111)、「OC(「資本主義を凍結せよ:オシファイ・キャピタリズム」反逆者)(P118)、「テクノ反逆者たち」(P122)について語られます。

 これからの私たちは、どのような資本主義社会を求めていくのでしょうか。本書を通じて感じたこと・考えたことを、自分一人ではなく、周りの家族や友人・知人と語り合い、私たち自らの未来を選び取っていけるようになりたいものです。

【目次】

はじめに

第1章 現代性に敗北する

第2章 パラレル世界との遭遇

第3章 コーポ・サンディカリズム

第4章 資本主義が死に絶えたそのあとの世界

第5章 審判が始まる

第6章 資本主義のない市場

第7章 天国でトラブル発生

第8章 再びの審判

第9章 脱出

コメント

タイトルとURLをコピーしました