●ジョン・トッド著、渡辺昇一訳「自分を鍛える! 人生の実学を学ぶ」三笠書房(知的生きかた文庫)、2002
ジョン・トッド(1800-1873)は、アメリカ開拓時代に牧師として活躍しながら多数の書籍を著しました。本書は1835年に“Todd‘s Student’s Manual, SELF-IMPROVEMENT”というタイトルで出版され、ロンドンだけでも15万部も売れた本です。
本書の目次構成をみてみると、以下に示すように私たちが生きていく上で参考になる考え方や実践的な知識や知恵が幅広く紹介されています。
第1章 自分の頭で考える
第2章 生産的な習慣・強い信念が自分を大きく育てる
第3章 確たる見識を身につけるために
第4章 緻密な頭脳をつくる読書法
第5章 人生の持ち時間をいかに有効に生かすか
第6章 修養をつんだ人の言葉を生きる糧にせよ
第7章 健康は頭脳・精神の滋養となる
第8章 つねに自分の限界をつき破って伸びよ
本書はStudent’s Manualといるタイトルですが、決して「学生向け」だけではなく、社会人にとっても有益なヒントが数多く得られます。これから、自己啓発を始めようと考えている方にも学習法、読書法等、参考になる点が多々あるでしょう。
ちなみに私は子供の大学入学時に本書の単行本をプレゼントしました。
●播田安弘「日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る」講談社ブルーバックス、2020年
艦船の設計エンジニアであった著者が「科学的アプローチ」を駆使して日本史上の3つの謎に取り組んだ書籍です。
蒙古襲来では、「軍船建造に必要な木材と森林面積」、「軍船建造に必要な大工と人夫の数」、「各種船舶を参考に推定した蒙古軍船の詳細」、「蒙古軍船による対馬海峡横断のシミュレーション」、「船に1時間乗ったときの上下加速度と周期別の嘔吐率」、「蒙古軍船1隻当たりの投錨に必要な面積」、「アーチェリー、蒙古短弓、和弓の飛距離比較」等々の根拠となるデータを整理します。そして、それらのデータを踏まえて、歴史的事実の確認を行うとともに、これまでの通説を検討していきます。
同様に、秀吉の大返しや戦艦大和においても、それぞれデータに基づいた分析が進められるだけでなく、「AHP」(階層分析法)による意思決定という新たな分析手法を活用するなど科学的手法を縦横無尽に活用されています。
これまでも研究テーマに他の分野の研究手法を活用することで新たな発見や学問分野が生まれてくることがありました。本書もそのような可能性が感じられるとともに、謎の解決に他分野の科学的手法を活用するというマリアージュに成功した一冊といえるでしょう。
なお、著者は2019年公開の映画「アルキメデスの大戦」では製図監修を担当されたとのことです。
●ジョセフ・E・スティグリッツ「スティグリッツ教授のこれから始まる『新しい世界経済』の教科書」徳間書店、2016年
著者のジョセフ・E・スティグリッツ教授は、2001年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者です。「本書は、アメリカ経済のどこに問題があるのか、どう修正すればいいのかを説明している。」ものです。中心となるメッセージは、「アメリカ経済は、経済の自然法則のせいでバランスを崩したのではない。今日の不平等は、資本主義の避けがたい発展の結果生じたわけではない。経済を支配するルールのせいでこうなったのだ。」とし、今の経済を形づくっているルール(「正統派経済学」、“サプライサイド”(供給重視の)経済学)を書き換える時だとしています。
はじめに-今こそ「新しい世界経済」へ大転換する時
序章-不平等な経済システムをくつがえす
第1部 世界を危機に陥れた経済学の間違い
第1章 “自由な市場”が何を引き起こしたか
第2章 最富裕層にのみ奉仕する経済
第3章 なぜ賃金は低いままなのか
第2部 地に堕ちた資本主義をこう変える
第4章 最上層をいかに制御するか
第5章 中間層を成長させる
おわりに-アメリカ型グローバリズムをゆるすな
現在、わが国でも新しい資本主義が検討され始めていますが、本書の内容には多くの参考となる提言が含まれています。本書で紹介されているアメリカで生じている問題には、わが国でも共通する部分が多々あります。今後の経済社会のあり方を考えていく上での必読の書と言えるでしょう。
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