【読書ノート】『人口戦略法案 人口減少を止める方策はあるのか』

 本書(山崎史郎「人口戦略法案 人口減少を止める方策はあるのか」日本経済新聞出版、2021年)を購入して、1日ちょっとで一気に読み通してしまいました。注も含めて556ページにも及ぶ書籍ですが、内容にどんどん引き込まれ、次の展開への期待が膨らみ、わくわくしながら読了しました。

 人口減少社会に突入した我が国の政策課題に関する勉強会から始まり、データに基づく緻密な現状分析とシミュレーション、各分野の専門家による最新の知見や事例の紹介、海外の政策や制度の詳細な分析による効果的な対策の抽出等、EBPM(Evidence Based Policy Making:根拠に基づく政策決定)のプロセスが示されていきます。

 と同時に小説の形式をとった本書では、社会の様々な利害関係者の動き、政府内部での政策決定プロセスや国会審議の動きなど、私たちが日常では知りえない舞台裏を知ることができます。国を動かしていく1つの政策を作り上げていくことがどれだけ大変で、どれだけ多くの方々の協力が必要なのかへの理解が深まります。

 そして、最終章を読んだ後、「私たちはこの書物を読むことで、人口減少問題への対応を一度経験(シミュレーション)できた。だから、私たちは現実の場面ではきっと、よりうまく対処することができるはずだ。」との確信をえることができました。

 そう、高齢者介護という極めて困難な課題に立ち向かい、介護保険制度を作り上げた際の中心メンバーの一人であられた著者の経験を踏まえたこの「政策立案シミュレーション小説」は、人口減少問題という喫緊の課題に取り組む際の道しるべになるでしょう。

 内閣総理大臣の所信表明演説(P74-P80)や衆議院内閣委員会会議録(P495-P506)には、その志の高さへの感動と質疑応答の緊迫感に鳥仇が立ちました。いろいろな場面で新たな発見や様々な感動を味わえただけでなく、日本の未来への希望と将来への努力の方向を示唆してくれた書籍です。

【目次】

Prologue 衝撃の海外レポート

第1章 1億人国家シナリオの行方

 1 朝食勉強会

 2 新政権の発足

第2章 高出生率国と低出生率国の違い

 3 出生率低下の構造・要因の分析

 4 制度をめぐる議論

第3章 出生率向上のための「3本柱」

 5 「こども保険」の提案

 6 「不妊治療・ライフプラン」と「結婚支援」の問題提起

第4章 「地方創生」と「移民政策」

 7 若者に焦点をあてた「地方創生」

 8 難問の「移民政策」

第5章 議論百出の人口戦略法案

 9 人口戦略のとりまとめへ

 10 法律の国会提出プロセス

第6章 波乱の「人口戦略国会」

 11 国会審議

 12 法案の行方

Epilogue 「始まり」の終わりか、「終わり」の始まりか -その後の動き

===========

↓↓この記事で紹介した書籍はこちら↓↓

人口戦略法案 人口減少を止める方策はあるのか

↓↓当ブログおすすめ書籍一覧はこちら↓↓

おすすめ書籍一覧

===========

コメント

タイトルとURLをコピーしました